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すだま

木魂

夢野 久作

線上閱讀夢野 久作《木魂(すだま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,668 字 · 46 頁

青空文庫

そのうちに大きくなったら解かる事と思って、自分一人の秘密にしたまま、忘れるともなく次から次に忘れていた。そうして彼は、それから後、中学から高等学校を経て、大学から大学院まで行ったのであるが、そのうちに彼の両親は死んでしまった。それから妻のキセ子を貰ったり、太郎という長男が生まれたり、又は学士から、小学教員になりたいというので、色々と面倒な手続きをして、ヤットの思いで現在の小学校に奉職する事が出来たりしたものであったが、それ迄の間というもの学校の図書館や、人通りの無い国道や、放課後の教室の中なぞでも、幾度となくソンナような知らない声から呼びかけられる経験を繰返したのであった。

しかし彼は、そんな体験を他人に話したことは依然として一度も無かった。ただそのうちにだんだんと年を取って来るにつれて、時々そんな事実にぶつかるたんびに、いくらかずつ気味が悪るくなって来たことは事実であった。……こんな体験を持っている人間は事に依ると俺ばかりじゃないかしらん。……他人がこんな不思議な体験をした話を、聞いたり読んだりした事が、今までに一度も無いのは何故だろう。……俺は小さい時から一種の精神異状者に生れ付いているのじゃないか知らん……なぞと内々で気を付けるようになったものである。