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ほんじょまつざかちょう
本所松坂町
尾崎 士郎
線上閱讀尾崎 士郎《本所松坂町(ほんじょまつざかちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 27,622 字 · 55 頁
左が義定、中央が義安、右が自分、すなわち上野介義央なのである。
小堀遠州が建築指揮にあたったといわれる華蔵寺は京都の清水寺を模してつくったといわれ、本堂から長い渡り縁をつたわって一段下った書院風の客室へはいると、鬱蒼と茂る境内の杉林を背景にした中庭は淡々とした趣向の中に、しっとりと心に迫るような風致をたたみあげている。
無造作にならべた石や、植込の松の配置にも、自然に調和した落ちつきがあり、控えの間の窓障子をあけると、額におさまった絵のように鐘楼がうかびあがる。上野介はこの部屋がすきで、領地へかえると、ほとんど陣屋へは入らず、大抵華蔵寺の一室で日をすごしていた。
三体の木像を安置した霊屋が出来ると、彼は自分の墓をつくった。もはや、この世に思いおくことはない。強いて言えば、あとはただ名君として行状を後世に残すことだけである。
元禄五年の春、五十二歳になった上野介は飄然として領地へかえってきた。着いたのは三月のはじめの雨の日である。大気はまだうすら寒かったが華蔵寺には早くも春の気配が漾っていた。
その夜、上野介は天英和尚の点ずる茶を喫したあとで、歌をつくった。