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ほんじょまつざかちょう
本所松坂町
尾崎 士郎
線上閱讀尾崎 士郎《本所松坂町(ほんじょまつざかちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 27,622 字 · 55 頁
と呼ばれ、後年この土地に任侠の気風が汪然として沸ぎりたったのも、彼等が尊敬措く能わざる領主、吉良上野に対する愛情の思い止みがたきものに端を発しているといえないこともない。いやいえないどころか、世を怨み、運命に憤る庶民の感情は三百年間、大地に沁みとおる水のごとく綿々として今につづいているのである。
もし嘘だと思ったら「吉良郷」まで行ってごらんになるといい。諸君がもし足一歩、横須賀村へ入って吉良上野の悪口を一言半句でも囁いたら、どんな結果を生ずるか、私(作者)といえども軽々しく保証のかぎりではない。
村には「吉良史蹟保存会」というものがあって、名君行状の数々は余すところなく調査しつくされているが、「保存会」から刊行しているパンフレットの中にある年譜にも次のような一節が書き加えられている。
「世俗吉良上野介につきて誤伝されあるもの枚挙に遑あらず、これすべて芝居浪花節の題をもって史実なりと誤認するより起る。宮迫村出生の清水一学、岡山出生の鳥居理右衛門、乙川出生の斎藤清左衛門等を、松の間刃傷後、上杉家より護衛のため附け人として来たるというがごときその一例にして真に嗤うに堪えぬ、云々」