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しゅにっき
朱日記
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《朱日記(しゅにっき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,583 字 · 28 頁
もう目の前の峰を越すと、あの見霽しの丘へ出る。……後は一雪崩にずるずると屋敷町の私の内へ、辷り込まれるんだ、と吻と息をした。ところがまた、知ってる通り、あの一町場が、一方谷、一方覆被さった雑木林で、妙に真昼間も薄暗い、可厭な処じゃないか。」
「名代な魔所でござります。」
「何か知らんが。」
と両手で頤を扱くと、げっそり瘠せたような顔色で、
「一ッきり、洞穴を潜るようで、それまで、ちらちら城下が見えた、大川の細い靄も、大橋の小さな灯も、何も見えぬ。
ざわざわざわざわと音がする。……樹の枝じゃ無い、右のな、その崖の中腹ぐらいな処を、熊笹の上へむくむくと赤いものが湧いて出た。幾疋となく、やがて五六十、夕焼がそこいらを胡乱つくように……皆猿だ。
丘の隅にゃ、荒れたが、それ山王の社がある。時々山奥から猿が出て来るという処だから、その数の多いにはぎょっとしたが――別に猿というに驚くこともなし、また猿の面の赤いのに不思議はないがな、源助。
どれもこれも、どうだ、その総身の毛が真赤だろう。
しかも数が、そこへ来た五六十疋という、そればかりじゃない。後へ後へと群り続いて、裏山の峰へ尾を曳いて、遥かに高い処から、赤い滝を落し懸けたのが、岩に潜ってまた流れる、その末の開いた処が、目の下に見える数よ。