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いなかがえり

林芙美子随筆集

林 芙美子

線上閱讀林 芙美子《林芙美子随筆集(いなかがえり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 58,157 字 · 118 頁

青空文庫

谷中葬場の方へ歩く。葬場の前の柳は十一月だと云うのにまだ青々としていた。ちょうど、道一つ越して柳の前になった処に、小さい額縁屋があって、昔からこの店のつくりだけは変らないようだ。私は、石材屋の横を左に曲って桜木町に這入ってみた。門構えのつつましい一軒の貸家が眼にはいった。さるすべりの禿げたような古木が塀の外へはみ出ている。前の川端さんのお家によく似ていた。差配を探して、その家を見せて貰ったが、長い間貸家だったせいか、じめじめしていて、家の中は陰気に暗かった。差配は、七十位の小さい白髪の爺さんで、耳が遠いのか、大きな声で「お住まいはどちらです」と訊いた。「落合です」と云うと、「落合」とおうむ返しに応えて、私のなりふりには少しも注意せずに、部屋の中まで杖にすがって歩いていた。玄関が四畳半、座敷が八畳、女中部屋が三畳、離れが六畳の品のいい階下だったけれども、座敷の床の間の後に二畳の変な部屋があるのが怖かった。二階は八畳で見晴らしが利きますと、差配は急な梯子をぼつりぼつりあがって行った。私もついてあがって行ったが、暗くて急な梯子段の中途にかかると、私はふと、佐藤春夫氏の化物屋敷と云う小説を連想して体がぞくぞくと震えた。