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いなかがえり
林芙美子随筆集
林 芙美子
線上閱讀林 芙美子《林芙美子随筆集(いなかがえり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 58,157 字 · 118 頁
貸家は小さい家らしかった。
「そうね、六畳に四畳半に……」と話して貰っているうちに、お互いに貸す意志も借りる意志もないのに、家の説明をしたり聞いたりすることは妙なことだった。私はお神さんの話を呆んやり聞いているのだ。
*
そこを出ると、すっかり暗くなったので、浅草へ出てみることにした。浅草へ出るとさすがに晴々して池の端の石道をぽくぽく歩いてみた。関東だきと云うのか、章魚の足のおでんを売る店が軒並みに出ている。花屋敷をまわって、観音堂に出て、扉の閉ってしまった堂へ上って拝んでみた。私の横にはゲートルをはいた請負師風の男が少時おがんでいた。観音様は夜通しあいているのかと思ったら、六時頃には大戸が降りてしまうのであった。仲店までには色々な夜店が出ている。海苔ようかんを売っている若い男は国定忠治の講談本を声高く読んでいたりした。人差指のない男が人参や大根を刻む金物を売っていたり、八十八ヶ所めぐりのスタンプ帳を売っている所なぞ、私は歩きながら子供のように面白かった。風船や絵本を売る子供たちが、夕べの別れに、「おしんちゃんに来るように云っとオくれ、いいかい。