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いなかがえり
林芙美子随筆集
林 芙美子
線上閱讀林 芙美子《林芙美子随筆集(いなかがえり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 58,157 字 · 118 頁
詩から出発していましたせいか、詩で云えば十行で書き尽くせるような情熱を、湯をさますようにして五十枚にも百枚にも伸ばして書く小説体と云うものが大変苦痛だったのです。段々、詩は人に読まれなくなっていましたが、詩へ向う私の心は烈しいものでした。
私は女友達の松下文子と云う方から五拾円貰って、牛込の南宋書院の主人の好意で『蒼馬を見たり』と云う詩集を出しました。松下文子と云う人は、私にとっては忘れる事の出来ない友人なのです。いまは北海道の旭川に帰り、林学博士松下真孝氏と結婚されているのですが、私の詩集も、このひとの友情がなかったら出版されていなかったのでしょう。
さて、詩集を出版したものの私の文学についての目標は依然として暗澹たるものでした。私の放浪記は好評悪評さまざまで、華々しい左翼の人たちからはルンペンとして一笑されていました。昭和五年改造社から、新鋭叢書と云った単行本のシリイズが出ましたが、その中へ、私の放浪記も加えられたのです。改造社へ放浪記の厚い原稿を持ち込んで二年目に、陽の目を見ることが出来たのですが、そのときは頭が痛いほどうれしく、私は身分不相応に貰った印税で、その秋、すぐ支那へ二ヶ月の予定で旅立って行きました。