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いなかがえり

林芙美子随筆集

林 芙美子

線上閱讀林 芙美子《林芙美子随筆集(いなかがえり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 58,157 字 · 118 頁

青空文庫

わたしはさまざまな記憶で落ちついていられなかった。歓びで、胸がはずんでいた。幼い日の女友達に逢いたいとおもった。もう女学校を卒業して十年以上になるのだから、その人たちはみんな奥さんになって、子供があるに違いない。

*

尾道の駅には昼すぎて着いた。新らしい果物屋、新らしい自動車屋、新らしい桟橋、何か昔と違った新鮮な町に変っていた。道も立派になり女車掌の乗っている銀色のバスが通っているけれども、いまだに昔と変らないのは、町じゅうが魚臭いことだ。その匂いを嗅ぐと母親を連れて来てやればよかったとおもった。だが、あんまり町が立派になっているので、歓びがすぐ失望にかわって行ってしまう。町では文房具屋にかたづいている友達を尋ねてみた。もう四人もの子もちだった。

「まア! 誰かとおもえば、あんたですかの、どうしなさったんなア、こんなにとつぜんで、ほんまに、びっくりしやんすが喃」

そう云って、その友達は、白粉の濃い綺麗な顔で、店の暗い梯子段を降りて来た。――わたしは海添いの旅館に宿をとった。障子を開けると、てすりの下が海で、四国航路の船が時々汽笛を鳴らして通っている。