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じゅうどうとけんとうのころがりじあい

柔道と拳闘の転がり試合

富田 常雄

線上閱讀富田 常雄《柔道と拳闘の転がり試合(じゅうどうとけんとうのころがりじあい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 3,666 字 · 8 頁

青空文庫

さて、その翌晩、二人はまた、同じ食堂で会った。

「ジョンソン、どうした。承知したか。」

ジョンソンは首を振って、

「だめ、だめ。あの日本人め、にっこり笑って『よしましょう』というんだ。なぜだといったら、『日本の柔道は身をまもる術だし、拳闘とはやり方が違う。それに拳闘家との試合を見世物にすることは、日本柔道の道にはずれる』……」

「な、なに、なんだと! 見世物……ううむ、おのれ、こうなったら、どうしても試合をやるぞッ。」

どしんとテーブルをげんこでたたいて、モンクスはまっかになってどなった。

サンフラスシスコの郊外にささやかな道場を開いて、アメリカ人に日本の柔道を教えていたのは、富田常次郎六段であった。講道館長の嘉納治五郎先生の最初の弟子だ。この富田六段がアメリカへ渡って、柔道をひろめだしたのは明治三十八年であった。アメリカのことで畳がないから、寝台に使うわらぶとんのようなものを室いっぱいに敷いて、毎日柔道を教えていた。

日露戦争に勝って、「日本強し」の声こそしていたが、そのころはまだ、日本人はあまり尊敬されていなかった。ずいぶんと日本人をあなどっているアメリカ人もあり、したがって柔道も、ごく一部分の者だけしか知らなかった。