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うめづしえんおうでん
梅津只円翁伝
杉山 萠円
線上閱讀杉山 萠円《梅津只円翁伝(うめづしえんおうでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 65,582 字 · 130 頁
中には蓄財のあった家もあるが、静にそれを守り遂げる事が出来ないで、馴れない商売で損亡を招く者が多く、又蓄える事を知らなかった人々は、急転直下して極端な貧窮状態に陥る外なかったのである。
その頃の事を目の当り見聞した人も漸く少くなったが、その窮状を語る話は数々あった。何とも転向の出来ない者は手内職をするとか、小商売を開くというのであったが、内職といっても団扇を貼るとか楊枝を削るとかいう程度で、それで一家を支えるなどは思いも寄らない事であった。商売といっても家財を店先に並べて古道具屋を出す位で、それも一般家庭に役立つ物は少く、已むを得ず二束三文に売り飛ばすと、あとは商品を仕入れる余裕がないから、屑屋同様になって店を仕舞うという有様であった。明治時代の大家と呼ばれた人の中に夜廻りをやって見たり、植木屋の手伝いをして見たりした人もある。芝居役者と共同の興行をやって見て、遂にその方へ這入った人もある。
という実に今から考えても夢のような惨澹たる時代であった。
こうした傾向の中心たる東京の真只中で窮乏に安んじながら能楽を捨てなかった翁の恩師能静氏の如きは実に鶏群中の一鶴と称すべきであったろう。