輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

しいのき

椎の木

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《椎の木(しいのき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 25,870 字 · 52 頁

青空文庫

茂樹は腕組みをして、室の隅を見つめていた。その眼には何にも映ってはいなかった。頭の奥で、何か一心に考えつめているか、或はただ茫然としているか、どちらかの様子だった。

隣りの室でも、母親は何をしてるのか、ことりとの物音もしなかった。写真の顔の列が浮上ってきて、良一は不気味な気持で、眼をそらした。

表の格子戸が、ばかに大きな音をたてて開かれた時、良一はほっと息をついた。その瞬間、茂樹は夢からさめたようにあたりを見廻し、おびえた様子で、手早く、写真を片付け初めた。不意に盗人にでも襲われたような慌てかたで、眼付が荒々しく、手がおののいていた。

玄関で、母親が誰かに応対していたが、やがて、茂樹を呼ぶ声がした。茂樹は返事もせず、写真を箱にしまってから、その箱をまた戸棚にしまい、そして出ていった。

良一はひとり取残されてぼんやりしていた。暫くたつと、茂樹がとびこんできて、彼の耳に囁いた。

「川村さんが来ています。ひょっとすると、くるかも知れません。すぐに出かけましょう。」

さも秘密らしく囁いて、じっと良一の顔をのぞきこんでくるのだった。

「母にはないしょにしといて下さい。