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かっこんとう
橘外男ワンダーランド ユーモア小説篇
橘 外男
線上閱讀橘 外男《橘外男ワンダーランド ユーモア小説篇(かっこんとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 16,213 字 · 34 頁
と、言ったところで、誰も私なんぞに、抱きついた女があったわけではない。
選りに選って私ごときクマソタケル然とした男に抱きつく女なぞのあろうはずもないことであるが、今から一昔の前、西班牙の公使が、フランコ政権を代表して、日本に駐していた時分であった。この公使館に、頗る優美な女がいた。明眸皓歯、風姿楚々たる、二十三、四の独身の秘書であったが、私は、このお嬢さんに、ゾッコン上せあがってしまった。
瞳の黒い、笑うと可愛い靨を、にいっと刻むなんてなことになってくると、雷の話をしているのか、お嬢さんの惚れ気を語っているのか、わけがわからなくなってしまうが、わたしこの夏は二十日間ばかり、休暇が貰えますのよ。どこか日本の景色のいいところ、案内して下さらない? なんてなことになったから、バカな私は有頂天になって、オウ、イエス、シュア、シュア! とばかり、身銭を切って恐ろしく方々へ、この秘書を引っ張り廻してくれた。
大島へ行って、三原山の噴火口を覗かせて、富士山麓の河口湖へ行って、野尻湖へ連れて行って、最後に、松島へすっ飛んだ。夏だから、大島の元村で、ゴロゴロピカッ! 河口湖で、もっと酷いやつをピシャンバリバリ! 野尻湖ときたら、天地も砕けんばかりのやつを、ゴロピシャッ!、しかし割合、平気でしたね。