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いきふどう

橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇

橘 外男

線上閱讀橘 外男《橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇(いきふどう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 198,400 字 · 387 頁

青空文庫

しかも上を見あげてさんざん狂態をつくしていたあげくのはてに、なんと、あろうことかあるまいことか! さくらの幹にもたれて上を見あげながら、グッと帯をひきさげて、きものの前をくつろげはじめました。

「ワッハッハッハッハこはおもしろし、おもしろし! 獣のぶんざいをもって、侍の腹の切りかたをしりたいとな! いかにもおしえてつかわす。後学のために、よーく上からながめておれ! 城代石藤左近将監の立ち腹の切りかたと、申すはな……まず、臍の下一寸左脇腹へ突きたてて、右へまわし……」

とうとうじぶんの腹へ、刀を突きたててしまいました。

「グッと上へ切っさきをあげ……痛くともうめきをあげず……ウウム、これはだいぶこたえるなこらえてうめきをあげぬが真の武士じゃ! ウウム、これはいかん、だいぶこたえる……グッとあげ……ウウム……ウウム」

血は滝のようにあふれだして、侍の腹の切りかたを、おしえてつかわすもなにもあったものではありません。もう幹にもたれてもいられなかったのでしょう。どっとまえのめりにうっ伏してウウムウウム、とくるしげにあえいでいたのは、まことに自業自得のなれのはてというほかはありませんでしたが、この時分には、もはやさっきの侍たちの注進によって、城内では御城代乱心のしらせに、上を下へとさわいでいましたでしょう。