輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

れもん

檸檬・ある心の風景 他二十編

梶井 基次郎

線上閱讀梶井 基次郎《檸檬・ある心の風景 他二十編(れもん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 127,934 字 · 263 頁

青空文庫

探りながら歩いてゆく足が時どき凹みへ踏み落ちた。それは泣きたくなる瞬間であった。そして寒さは衣服に染み入ってしまっていた。

時刻は非常に晩くなったようでもあり、またそんなでもないように思えた。路をどこから間違ったのかもはっきりしなかった。頭はまるで空虚であった。ただ、寒さだけを覚えた。

彼は燐寸の箱を袂から取り出そうとした。腕組みしている手をそのまま、右の手を左の袂へ、左の手を右の袂へ突込んだ。燐寸はあった。手では掴んでいた。しかしどちらの手で掴んでいるのか、そしてそれをどう取出すのか分らなかった。

暗闇に点された火は、また彼の空虚な頭の中に点された火でもあった。彼は人心地を知った。

一本の燐寸の火が、焔が消えて炭火になってからでも、闇に対してどれだけの照力を持っていたか、彼ははじめて知った。火が全く消えても、少しの間は残像が彼を導いた――

突然烈しい音響が野の端から起こった。

華ばなしい光の列が彼の眼の前を過って行った。光の波は土を匍って彼の足もとまで押し寄せた。

汽鑵車の烟は火になっていた。反射をうけた火夫が赤く動いていた。

客車。食堂車。寝台車。