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れもん

檸檬・ある心の風景 他二十編

梶井 基次郎

線上閱讀梶井 基次郎《檸檬・ある心の風景 他二十編(れもん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 127,934 字 · 263 頁

青空文庫

「ここを登りつめた空地ね、あすこから富士がよく見えたんだよ」と自分は言った。

富士がよく見えたのも立春までであった。午前は雪に被われ陽に輝いた姿が丹沢山の上に見えていた。夕方になって陽がかなたへ傾くと、富士も丹沢山も一様の影絵を、茜の空に写すのであった。

――吾々は「扇を倒にした形」だとか「摺鉢を伏せたような形」だとかあまり富士の形ばかりを見過ぎている。あの広い裾野を持ち、あの高さを持った富士の容積、高まりが想像でき、その実感が持てるようになったら、どうだろう――そんなことを念じながら日に何度も富士を見たがった、冬の頃の自分の、自然に対して持った情熱の激しさを、今は振り返るような気持であった。

(春先からの徴候が非道くなり、自分はこの頃病的に不活溌な気持を持てあましていたのだった。)

「あの辺が競馬場だ。家はこの方角だ」

自分は友人と肩を並べて、起伏した丘や、その間に頭を出している赤い屋根や、眼に立ってもくもくして来た緑の群落のパノラマに向き合っていた。

「ここからあっちへ廻ってこの方向だ」と自分はEの停留所の方を指して言った。

「じゃあの崖を登って行って見ないか」