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れもん

檸檬・ある心の風景 他二十編

梶井 基次郎

線上閱讀梶井 基次郎《檸檬・ある心の風景 他二十編(れもん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 127,934 字 · 263 頁

青空文庫

小学校には生徒から名前の呼び棄てにされている、薫という村長の娘が教師をしていた。まだそれが十六七の年頃だった。――

北牟婁はそんな所であった。峻は北牟婁での兄の話には興味が持てた。

北牟婁にいた時、勝子が川へ陥ったことがある。その話が兄の口から出て来た。

――兄が心臓脚気で寝ていた時のことである。七十を越した、兄の祖母で、勝子の曽祖母にあたるお祖母さんが、勝子を連れて川へ茶碗を漬けに行った。その川というのが急な川で、狭かったが底はかなり深かった。お祖母さんは、いつでも兄達が捨てておけというのに、姉が留守だったりすると、勝子などを抱きたがった。その時も姉は外出していた。

はあ、出て行ったな。と寝床の中で思っていると、しばらくして変な声がしたので、あっと思ったまま、ひかれるように大病人が起きて出た。川はすぐ近くだった。見ると、お祖母さんが変な顔をして、「勝子が」と言ったのだが、そして一生懸命に言おうとしているのだが、そのあとが言えない。

「お祖母さん。勝子が何とした!」

「……」手の先だけが激しくそれを言っている。

勝子が川を流れてゆくのが見えているのだ! 川はちょうど雨のあとで水かさが増していた。