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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
線上閱讀下村 湖人《次郎物語(じろうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,443 字 · 398 頁
それは、鳴りはじめた時刻がきわめて正確だったからばかりでなく、その音の調子に何かしら落ちつきがあり、しかも、いつまでたってもそれが乱れなかったからであった。
(最初の朝の板木の音が、こんなだったことは、それまでにまったくないことだ。だれだろう、今朝の当番は?)
そう思ったとき、自然に、かれの眼にうかんで来た二つの顔があった。それは、大河無門の顔と、青山敬太郎のそれだった。ゆうべの懇談会の様子から判断して、こんな落ちついた板木の打ちかたのできるのは、おそらくこの二人のほかにはないだろう。そして、第一週の管理部の責任をひきうけたのは第五室だったのだ。――そこまで考えると、かれはもう、今朝の板木が大河の手で打たれていることはまちがいないことだと思った。
かれは、自分の部屋の掃除をすますと、そっと事務室との間の引き戸をあけた。いつもなら、そのあとすぐ事務室の掃除にとりかかる順序だったが、しばらく敷居のところに突っ立って耳をすました。それから、足音をしのばせるようにして入り口に近づき、ドアを細目にあけて、板木のほうに眼をやった。板木は、事務室前の廊下と中廊下との角に、斜め向きにかかっていたのである。