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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

線上閱讀下村 湖人《次郎物語(じろうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,443 字 · 398 頁

青空文庫

しかし、兄はおそらく道江をつれて来る。いや、かならずつれて来る。そして、無意識な残酷さで自分の痛いきずにさわろうとしているのだ。二人はあらゆる好意にみちた言葉を自分になげかけるだろう。二人のむつまじさを三人にひろげることによって、二人は一そう深いよろこびを味わおうとつとめるだろう。二人はいろいろと過去の思い出を語るにちがいないが、その思い出の愉快さも不愉快さも、三人に共通するものとして語られるにちがいない。自分は、二人のそうした無意識な残酷さにたいして、いったいどういう態度をとればいいのか。いや、どういう態度をとりうるというのか。

かれには、まったく自信がなかった。白鳥会時代の心の修練も、友愛塾の助手としての現在の信念も、こうした場合の態度を決定するには、何のたしにもならなかった。かれがこれまで信奉もし、実践にもつとめて来た、友愛・正義・自主・自律・創造、といったような、社会生活の基本的徳目は、今のかれには、全く力のない、空疎な言葉の羅列でしかなかった。そしてそこに気がつくと、かれはいよいようろたえた。

道江という一女性が、間もなく、自分の目のまえに現われるという小さなできことの予想、――大きな人間社会の運行の中では、まったくどうでもいいような、そうした小さなできごとの予想が、どうしてこれほどまでに自分