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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

線上閱讀下村 湖人《次郎物語(じろうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,443 字 · 398 頁

青空文庫

かれらはいつの間にか、大河を「さん」づけで呼ぶようになっていたが、それは、そうした変人に対するかれらの親しみの情をこめた敬称だったのである。

入浴がすむと、いよいよ待望の「お国自慢の会」がはじまった。

広間にあつまったみんなの顔は、つやつやと光って晴れやかだった。

「今夜は何だか銀座の匂いがするようだね。」

朝倉先生は、座につくと、すぐそんなしゃれを飛ばした。

「銀座の匂いは、もう風呂で流してしまったんです。」

だれかがすかさず応酬した。つづいて、

「おみやげに、すこし残しておくところだったね。」

そんなふうで、最初から笑いが室内の空気をゆりうごかしていた。

「お国自慢の会」は、一面「郷土を語る会」であり、他面「郷土芸術の発表会」であった。あるものは演説口調で郷土の偉人や、名所旧蹟や、特殊の産業などを紹介し、あるものは郷土の民謡や舞踊を披露した。かれらは決して各府県青年の代表という資格で集まって来ていたわけではなかったが、たいていは、立ちあがるとすぐ、力みかえって「ぼくは○○県を代表して」などと、前口上をのべるのであった。かれらを、日本の青年に通有な、そうした無意味な構え心から脱却させようとしても、それは、友愛塾の一週間ぐらいの共同生活では、どうにもならないことだったのである。