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うたあんどん

歌行灯

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《歌行灯(うたあんどん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 36,094 字 · 72 頁

青空文庫

博多帯しめ、筑前絞、

田舎の人とは思われぬ、

歩行く姿が、柳町、

と博多節を流している。……つい目の前の軒陰に。……白地の手拭、頬被、すらりと痩ぎすな男の姿の、軒のその、うどんと紅で書いた看板の前に、横顔ながら俯向いて、ただ影法師のように彳むのがあった。

捻平はフト車の上から、頸の風呂敷包のまま振向いて、何か背後へ声を掛けた。……と同時に弥次郎兵衛の車も、ちょうどその唄う声を、町の中で引挟んで、がっきと留まった。が、話の意味は通ぜずに、そのまま捻平のがまた曳出す……後の車も続いて駈け出す。と二台がちょっと摺れ摺れになって、すぐ旧の通り前後に、流るるような月夜の車。

三

お月様がちょいと出て松の影、

アラ、ドッコイショ、

と沖の浪の月の中へ、颯と、撥を投げたように、霜を切って、唄い棄てた。……饂飩屋の門に博多節を弾いたのは、転進をやや縦に、三味線の手を緩めると、撥を逆手に、その柄で弾くようにして、仄のりと、薄赤い、其屋の板障子をすらりと開けた。

「ご免なさいよ。」

頬被りの中の清しい目が、釜から吹出す湯気の裏へすっきりと、出たのを一目、驚いた顔をしたのは、帳場の端に土間を跨いで、腰掛けながら、うっかり聞惚れていた亭主で、紺の筒袖にめくら縞の前垂がけ、草色の股引で、尻からげの形、にょいと立って、