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ぶしゅうこうひわ

武州公秘話

正宗 白鳥

線上閱讀正宗 白鳥《武州公秘話(ぶしゅうこうひわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 2,427 字 · 5 頁

青空文庫

徳川末期文学には溌溂たる描写がことに欠けている。自然と人事との交錯する或光景の描写の不思議にうまいのは、「源氏」「枕」「大鏡」などの、平安朝ものに見られるのだ。「武州公秘話」のうち、法師丸が老女に連れられて、敵の首に装束をしている婦女子の部屋を訪ずれるあたり、織部正が曲者に鼻をもがれるあたり、異様な光景の叙事たるに留まらず、或幻影の印象が読者の心に残るのは、この作者が平安朝古典伝来の描写力を有っているためであろう。西洋の近代小説の形式を採らず、自国の物語の体裁を好んで用いんとするのは、この作者近来の傾向であるらしいが、物語が自ら描写になったら日本文学として至極の境地であると、私は思う。永井君の作品では、「榎物語」が、そういう意味で逸品であると私は思う。

鼻については、芥川君の小説も思出されたが、それよりも、ゴーゴリの「鼻」が思出された。理髪師によって削取られた或男の鼻が、官吏の礼服を着けていろんな所に出没するという、甚だ巫山戯た小説であるが、そこにシリアスな人生観察が宿っていそうに推察される。手が無くっても、足が無くっても、或は目が無くっても、人間はまだしも忍び得られるのだが、さして必要のなさそうな鼻が無くっては最も汚辱を感じるのだ。