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ぶしゅうこうひわ

武州公秘話

谷崎 潤一郎

線上閱讀谷崎 潤一郎《武州公秘話(ぶしゅうこうひわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 107,572 字 · 209 頁

青空文庫

と、眼の色を変えて叱りつけた。彼は厳粛な空気を保つために低音を以てひそ/\と語り、女共にも絶対に高声を出すことを禁じた。そして、たま/\彼の注文通りに行動しないものがあると、恐ろしく機嫌が悪かった。初め女中共は、今夜の彼の思い付きが聊か突飛過ぎるので、此れは殿様と道阿弥とが豫め示し合わせて、彼女たちを恐がらせようと云う悪戯かも知れないと、半ばそんな風に疑ぐっていた。事実、いかに道阿弥の表情が上手であっても、又うまい工合に床から首が出ていたとしても、現にそれが胴につながっているものを、自由に引っくり覆したり持ち運んだりは出来ないのであるから、練習用として決して適当な代物でない。第一道阿弥のような坊主頭では、髪の結い方の稽古にも差支える。そのくらいなら西瓜でもちぎって来た方がまだしも簡便で、床板に穴を開ける手数だけでも省ける。それに河内介の態度が今夜に限って仔細らしく糞真面目なのも、何か曰くがありそうで、旁彼女たちには、本気か冗談か分りかねた。「首になった道阿弥」も、その点は彼女たちと同じであった。此れは事に依ると、殿様や女中たちが自分を困らせて面白がるのではないかと、彼もひそかにそう考えた。