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ぶしゅうこうひわ
武州公秘話
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《武州公秘話(ぶしゅうこうひわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 107,572 字 · 209 頁
と、自ら記している。つまり此の手記は、老後のつれ/″\に在りし世の事どもをおもい出だして書き綴ったと云う風に見えるが、しかし「念佛を申すよりほかのいとなみもない」尼の身が、なんの目的でこれを書く気になったのだろう。尼自身の云う所に依れば、「つら/\武州公の行状を考えると、世の中には善人も悪人もなく、豪傑も凡人もない。賢き人も時には浅ましく、猛き人も時には弱く、きのう戦場に於いて百千の敵を取り挫いだかと思えば、きょうは家に在って生きながら獄卒の笞を受ける。花顔柳腰の婦女子も或は羅刹夜叉となり、抜山蓋世の勇士も忽ち餓鬼畜生に変ずる。畢竟するに武州公は、因果の理輪廻の姿を一身に具現して衆生の惑いを覚まさんがために、暫く此の世に仮形し給うた佛菩薩ではないであろうか。………」と、そんな風な感想を述べて、結局「武州公は貴きおん身に地獄の苦患を忍び給い、その功徳に依ってわれら凡夫に菩提の心を授けて下すった有難いお方である。されば自分が公の行状を書き記すのも、一つには追善供養のため、一つには報恩謝徳のためで、別に他意ある次第ではない。もし公のふるまいを見て嘲り笑うものがあれば、それこそ罰あたりの輩であって、心ある者はたゞ/\有難いと思うべきである」