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むさしの
武蔵野
国木田 独歩
線上閱讀国木田 独歩《武蔵野(むさしの)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 15,584 字 · 31 頁
日は青々とした空に低く漂ッて、射す影も蒼ざめて冷やかになり、照るとはなくただジミな水色のぼかしを見るように四方に充ちわたった。日没にはまだ半時間もあろうに、モウゆうやけがほの赤く天末を染めだした。黄いろくからびた刈株をわたッて烈しく吹きつける野分に催されて、そりかえッた細かな落ち葉があわただしく起き上がり、林に沿うた往来を横ぎって、自分の側を駈け通ッた、のらに向かッて壁のようにたつ林の一面はすべてざわざわざわつき、細末の玉の屑を散らしたように煌きはしないがちらついていた。また枯れ草、莠、藁の嫌いなくそこら一面にからみついた蜘蛛の巣は風に吹き靡かされて波たッていた。
自分はたちどまった……心細くなってきた、眼に遮る物象はサッパリとはしていれど、おもしろ気もおかし気もなく、さびれはてたうちにも、どうやら間近になッた冬のすさまじさが見透かされるように思われて。小心な鴉が重そうに羽ばたきをして、烈しく風を切りながら、頭上を高く飛び過ぎたが、フト首を回らして、横目で自分をにらめて、きゅうに飛び上がッて、声をちぎるように啼きわたりながら、林の向うへかくれてしまッた。