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ぶそうせるしがい
武装せる市街
黒島 伝治
線上閱讀黒島 伝治《武装せる市街(ぶそうせるしがい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,959 字 · 234 頁
高取の横には、内ポケットまでさぐられて、ビラを見つけられ、重藤中尉に、頬がちぎれるほど殴りとばされた那須がいた。
那須は何も云わず黙っていた。
「いくら、ビラを取りあげて、やかましく云ったって、俺等の脳味噌まで引きずり出す訳には行かねえんだぞ!」
誰かゞ、云った。
「それはそうだ!」と、那須は黙って考えた。
「俺れが何を考えようが、何をやろうが、それゃ、俺の勝手だ!」
藤のようなアカシヤの花が匂っていた。その近くで柿本は、小母の一家がどうしているか、それを気にかけていた。
消息をたしかめるひまもなかった。
遠い血縁のはしッくれでも、海を一つ渡って、内地を離れると、非常に近しい親か兄弟のように感じられる。
彼は、居留民保護の名で、盲腸炎の小母を見舞に帰るひまもなくせき立てられて、あわたゞしく、こゝまでやって来た。
しかし、彼とは最もちかしい、市街の方々に散らばって、細々と暮しを立てゝいる人々や、血縁のつながっている人間を、直接、保護することも、行って見ることも出来なかった。
彼は工場を保護していた。
そのために、汗みどろになって働いた。
汗みどろになって守備作業をつゞけた。