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ぶそうせるしがい
武装せる市街
黒島 伝治
線上閱讀黒島 伝治《武装せる市街(ぶそうせるしがい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,959 字 · 234 頁
五六人の足音が、塀の向側でどやどやと椅子や箱を蹴散らしている。
便所にも来る様子がした。塀がドシンと蹴られた。耳をすました。話声は支那語だ。中津だろうか南兵だろうか? どっちにしろ見つかれば殺されるか、裸体に引きむかれるかだ。
家と家の隙間は、反対側の小路に通じて開いていた。慌てゝ、白足袋跣足で、逃げて行く人かげが細い間からちらッと見えた。着剣のカーキ服が馳せて来る。何も考えるひまはなかった。その小路へとび出した。
そして、人が走って行く方へ一目さんに走ってしまった。前にのろ/\と行く者は、押しのけて走った。一郎はどうなったか忘れてしまっていた。
KS倶楽部へは、あとから、あとからといくらでも避難者が押しよせて来た。いつのまにこういう大動乱になってしまったか? 彼女達は不思議に思った。彼女の家が市街戦のきッかけとなった。それは知らなかった。悪いのは南兵だ。そう思わせられた。多くの人々も、勿論、そう思っていた。いつでも事件のきッかけは中津のような反動のゴロツキが必要に応じて作っているのだ。そういうことは勿論知らなかった。
遠いところや、或は近くで、大砲や銃声が断れ/″\に、又、つゞいて響いていた。