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ぶそうせるしがい

武装せる市街

黒島 伝治

線上閱讀黒島 伝治《武装せる市街(ぶそうせるしがい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,959 字 · 234 頁

青空文庫

夜気がいくらか寒くなったようだ。

第一校舎の脇を通りぬけた。向うのアカシヤの植えこみに包まれた鈎型の第三、第四校舎の間で、焚火が見えた。若芽が伸びたアカシヤの葉末は、焚火に紅く染っていた。

「怖かないかね?」いざという場合には、自分の方が、一枚うわ手だと確信している陳長財は、冷かすように囁いた。「馬鹿! いらんことを喋っちゃいかん!」

山崎は真面目に叱った。と同時に、アカシヤの幹と幹との間で、「誰れだ、そこへ来るんは?」という支那語の声がした。

手にピストルを握っている有様が、遠くで燃え上った焚火にすけて見えた。

用心してやがるんだな。相手がやり出せば、やぶれかぶれだ、畜生! と考えて、山崎は腰のブローニングに手をやった。

「タフト先生はいらっしゃるかね?」

陳はやはり歩きながら訊ねた。顔をたしかめるため、黒い影はアカシヤの間から、近づいて来た。

「君は誰れだ?」と影は云った。

「師範部の学生だ。」

「名前は?」

「先生に、今夜、お伺いする約束がしてあるんだ。」山崎は横から支那語で呶鳴った。「学生が学校へ這入って行くんが、何故に文句があるんだい!」

歩哨小屋のような門鑑の前をぬけて、柵をめぐらした校内に這入ると、彼は、陳長財のかげにかくれて、焚火からは見えないように、一歩ほどあとにおくれた。