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しまでをかたる

死までを語る

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《死までを語る(しまでをかたる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 42,739 字 · 85 頁

青空文庫

「博文館へ話するから、談話筆記でもとらないか」

と、云ってくれた。それで、かかりの人に逢うと

「鎌田栄吉さんを訪問してきてくれませんか」

と、いうのである。

「そして、五枚位に書いてもらいたいんだが」

私は、すぐ鎌田氏を、慶応義塾に訪うた。

「明日午後一時に来なさい」

というのである。その日に行くと、氏は、部屋から出てきて、私の待っている廊下――庭に面した廊下へ立ったまま、青年に対する訓戒の言葉を話された。私が、それを筆記し終ると

「見せてもらいたい」

と仰しゃった。私はその日、戻るとすぐ清書して送ったが、それっきりである。私は、筆記もとれないらしいのである。その内に、子が出来た。「木の実」という名をつけた。産婆と、隣りの婆さんとに

「家にいてはいけません」

と、云われて、早稲田のグラウンドの周囲を二時間の余も、歩いていたのを憶えている。戻って来ると

「二人とも達者だよ」

と、婆さんは、云ってくれたが、私は

(何うして生活すべきか)

が、第一であった。父にとっては、初孫であるし、いい時に生れやがったと、すぐに、父に無心さした。着物に金を少し送ってきた。ほっと一息ついたが、それはほんの一息である。