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さつじんき
殺神記
田中 貢太郎
線上閱讀田中 貢太郎《殺神記(さつじんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 3,120 字 · 7 頁
「鹿の肉は好きだが、この辺は鹿があまりいないから、喫べられない」
元振は腰に付けていた糧食の鹿の脯を出した。
「これは、鹿の脯でございます」
元振は剣を抜いてその脯を一きれ切って左の手でさしだした。邪神は喜んで片手を出した。脯を載せた元振の手は邪神の手首に纏わり着いた。邪神は驚いて手を引こうとした。元振は剣を閃かして一刀の下に腕の付け根から切り落した。邪神は吼え叫んで逃げた。邪神に随いてきていた者も逃げてしまった。元振は邪神の手を持ったなりに剣を振り冠っていた。
切り取った邪神の手は毛の荒い野猪の腕であった。
朝、元振と女が話していると村の人が来た。村の人は女の死骸を収めにきたところであった。村の人は無事な女と元振を見て驚いた。その村の人の眼に野猪の片腕が見えた。
「村の鎮守様だ、神様の手を切るとは甚いことをしたものだ、どんな祟りがあるかも知れん、叩き殺して神様にお詫びをする」
村の人は口ぐちに怒りだした。
「人身御供をとるような神は邪神だ、天地に容れられない大罪だ、その道理が判らないとは、なさけない奴等だ」
村の人も元振の道理ある詞に怒りを収めた。村の人は元振を先頭に立てて、血の滴を随けて二十里ばかりも往った。