輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

ははのじょうきょう

母の上京

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《母の上京(ははのじょうきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 16,655 字 · 33 頁

青空文庫

夏川は驚きも悔いもなかつたものだ。たゞ、行きついてみて、そのあるがまゝのあさましさを納得させられただけのことだ。ひからびて黒ずんだ枯木のやうな肉体と、そこに棲む、もはや夢といふもののない亡者のやうな執念だけを見たものだ。

夏川はよく眠つた。生活自体が睡眠のやうなものだと彼はつく/″\思つたが、要するにこの現実を夢と思へばいゝではないかと彼は考へてしまつたものだ。夢といふ奴は見たくないと思つても、厭な夢を見せられる。いくら見たいと思つても良い夢ばかりは見られない。その夢と同じことで、この現実も自分の意志ではどうにもならず、だから要するに、この現実も夢だと思つてしまふにかぎる。夏川はさう考へた。俺は知らない、俺は夢を見てゐるのだ、と。

夏川がおそく帰つてきて寝床へもぐりこむ。するとその寝床には枯れたやうな女がねて待ちかまへてゐる。さもなければ、彼が眠らうとするころ、手さぐるやうにして隣室の女が這ひこんでくるのである。夢には角がないから、彼は夢を憎みはしない。たゞ、夢を見てうなされるより、なるべく夢を見ずに眠りこけたいと考へる。事実彼はねむいのだ。いつでも眠い。