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すいがいざつろく
水害雑録
伊藤 左千夫
線上閱讀伊藤 左千夫《水害雑録(すいがいざつろく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,302 字 · 25 頁
いずれにしても明日の事は判らない。判らぬ事には覚悟のしようもなく策の立てようも無い。厭でも中有につられて不安状態におらねばならぬ。
しかしながら牛の後足に水がついてる眼前の事実は、もはや何を考えてる余地を与えない。自分はそれに促されて、明日の事は明日になってからとして、ともかくも今夜一夜を凌ぐ画策を定めた。
自分は猛雨を冒して材木屋に走った。同業者の幾人が同じ目的をもって多くの材料を求め走ったと聞いて、自分は更に恐怖心を高めた。
五寸角の土台数十丁一寸厚みの松板数十枚は時を移さず、牛舎に運ばれた。もちろん大工を呼ぶ暇は無い。三人の男共を指揮して、数時間豪雨の音も忘れるまで活動した結果、牛舎には床上更に五寸の仮床を造り得た。かくて二十頭の牛は水上五寸の架床上に争うて安臥するのであった。燃材の始末、飼料品の片づけ、為すべき仕事は無際限にあった。
人間に対する用意は、まず畳を上げて、襖障子諸財一切の始末を、先年大水の標準によって、処理し終った。並の席より尺余床を高くして置いた一室と離屋の茶室の一間とに、家族十人の者は二分して寝に就く事になった。幼ないもの共は茶室へ寝るのを非常に悦んだ。