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ひょうが
氷河
黒島 伝治
線上閱讀黒島 伝治《氷河(ひょうが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,824 字 · 42 頁
「自分はまだ癒っちゃ居らんでしょう! この病院でもいい、こゝに置いて下さい! いやだ! 俺ゃまだ銃がかつげないんです!」
栗本の眼はそれを訴えた。そして、軍医の顔を、何か反抗するように見つめた。
「よしッ!」
「始めの約束通り内地へ帰して下さい!」
彼の眼はもう一度それを訴えた。
「よしッ!」
軍医の頑固な冷たいものが、なお倍加して峻厳になってきた。
ベッドに帰ると、ひとしお彼の心は動揺した。まだ絶望したくはなかった。窓外には、やはり粉雪がさら/\と速いテンポで斜にとんでいた。――どっちへころぶことか! 今は、もうすべてが軍医の甲のすべっこい、光っているあの手一つに握られているのだ。
彼は診断室の方の物音と、廊下を通る看護卒の営内靴に耳をすまして時を過ごした。甲のすべっこい、てら/\光っている手は信頼できない性格の表象だ。どっかの本で見た記憶が彼を脅迫した。三時半を過ぎると、看護卒が卑屈な笑い方をして、靴音を忍ばし、裏門の方へ歩いて行った。五十銭持って、マルーシャのところへ遊びに行ったのだ。不安は病室の隅々まで浸潤してきた。栗本は夕飯がのどを通らなかった。