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こおりぐらのにかい
氷蔵の二階
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《氷蔵の二階(こおりぐらのにかい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 18,201 字 · 37 頁
志野はどうせ暇だからと云って、須田の家まで房を送って来た。
四五日経って、房が氷屋の二階へ行った。
濡れた大鋸屑(おがくず)が、車庫のような混擬土(コンクリート)の店先に散ばっていた。横手の階子を、土足で登って行く――。登りきった処に、並んで二つ、それと直角に一つ、西洋扉がある。それらが五燭の、見捨てられたような電燈に照らされている。――
志野は、大きな室の真中で、長襦袢の衿をつけ更えていた。
「まあ、よく来てくれたわね、直き済んじゃうから入って頂戴」
志野が、こんな荒涼とした建物の中でも、快活で、平気で、花弁の大きい白い花のような顔付をしているので、房もやっと自分の平静さをとり戻した。
「今晩はね、お暇いただいて来たから私ゆっくりして行けるのよ。仕事もって来たげたわ」
房は、志野に会った夜、帰って黙っていられない程悦びを感じた。丁度細君が仕立てに出そうとしていた縫いなおしのお召があった。彼女は、志野の内職の足しにそれを持って来たのであった。
志野は、横坐りのまま縫物材料を指先でいじった。房は失望を感じた。が、相手を引立てるように説明を加えた。
「縫いなおしじゃ厭かも知れないけど、うんと上手く縫って頂戴、そしたら、私、これからお上のもんは、皆あなたに頼むようにするわ」