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えどまえのつり

江戸前の釣り

三遊亭 金馬

線上閱讀三遊亭 金馬《江戸前の釣り(えどまえのつり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 106,910 字 · 214 頁

青空文庫

秋から冬にかけては、鼠も人間同様に、食欲旺盛のときである。日本中で、一年に六百五十万石というから、昭和二十六年度の外米輸入高だけを、鼠に食わして飼っていることになる。猫いらずという薬がなくとも、ぼくの鼠取りはできるから、さしずめ、猫いらずいらずとも名づけるか。

ぼくが寄席から帰って一杯やっていると、天井でガタガタと傍若無人のふるまい。家の者もあきれかえってかまわないのをよいことに、人がいるところへも、ちょいちょいご機嫌を伺うように顔を出す。

はなし家の鼠だけに人なつこくって、追ってもなかなか逃げない。「鼠の出る家は、火事がないというから安心しろ」というものの、いつのまにか、茶箪笥の裏から、台所へ穴をあけたらしい。ときには、大事な物まで食い荒らされる。

膳に向かって一杯やっていると、茶箪笥の後ろでコトコトと音がする。釣りは魚と決まったものじゃない。こいつをひとつ釣ってやろうと、釣り箱から仕かけを取り出し、道糸はナイロンの一厘に、針は袖型の二厘、餌は食膳にある自分と同じ油あげの焼きたて、大根おろしをつけて――鼠に大根おろしはつけないが――油あげをこまかく切って針につけ、道糸に鈴をつけて、一杯飲んでいると、かすかにチリチリと動く。