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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《江戸情話集(かごつるべ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,779 字 · 407 頁
客の金をあずかっておきながら、それを渡すときに文句を付けるというのは、宿屋として甚だ質のよくない遣り方で、亭主も少し躊躇したが、しょせんは自分の欲心ですることではない、預け主のために思うのであるという理屈から、亭主も治六の忠義に同情して、結局その相談に乗ることになった。しかし、いよいよその金をあずかるという段になると、次郎左衛門は半分だけしか亭主に渡さなかった。
「八橋に土産もやらなければならない。二階じゅうの者にも相当のことをしてやりたい。まして歳の暮れの物日前だ。それ相当の用意がなくって廓へ足踏みができると思うか」
彼は治六を叱り付けて、五百両を持って供をしろと言った。治六は渋々ながら付いて行くことになった。二人とも髪月代をして、衣服を着替えて出た。ここであくまでも逆らったところで仕方がない。ともかくも残りの半分にさえ手を着けなければまあいいと、治六も諦めを付けていた。
二人が駕籠で廓へ飛ばせたのは昼の八つ(午後二時)を少し過ぎた頃であった。雷門の前まで来ると、次郎左衛門を乗せた駕籠屋の先棒が草鞋の緒を踏み切った。その草鞋を穿き替えている間に、次郎左衛門は垂簾のあいだから師走の広小路の賑わいを眺めていたが、やがて何を見付けたか急に駕籠を出ると言った。