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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《江戸情話集(かごつるべ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,779 字 · 407 頁
お辰やお花にも鼻薬をやって、お里の店の様子を絶えず探らせようとしていた。
今も夢うつつでその事ばかりを考えていた。もう少し涼しくなると、彼女は鱗形の銀紙を貼り付けた紅い振袖を着て、芝居で見る清姫のような姿になって、舞台で蛇を使うことがある。自分が丁度その姿で男を追い掛けてゆくと、両国の川が日高川になって、自分が蛇になって泳いでゆく。そんな姿がまぼろしのように彼女の眼の前に現われた。と思うと、自分の可愛がっている青い蛇が忽ち一丈あまりの大蛇になって、林之助とお里の二人を巻き殺そうとしている。男と女は悲鳴をあげて苦しみもがいている。そんなおそろしい景色が覗きからくりの絵のように彼女の眼の前に展開された。そのからくりの絵はまた変って、林之助と自分とが日傘をさして、のどかな春の日の両国橋を睦まじそうに手をひかれて渡ってゆく……。
それが悲しいか、怖ろしいか、気味がいいか、嬉しいか、お絹もそれをはっきりと意識するには、頭が余りにぼんやりしていた。
「もう一度お茶を飲みませんか」と、お君が声をかけた。
お絹は又もや微かにうなずいた。薬を飲まされて、あたりが少し明かるくなったように思われた。