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かごつるべ

江戸情話集

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《江戸情話集(かごつるべ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,779 字 · 407 頁

青空文庫

もう今頃からどこへ行っても、大小をうけ出す銀の才覚もできそうもない。さりとてお絹の家へ引っ返す気にもなれないので、林之助は行くさきに迷った。酔いも手伝って彼はもう自棄になった。今夜もこれからお里の家へ行こうと思った。お絹はもう死んでいる、お里のおふくろも死んでいる、だれにも遠慮気兼ねもいらないと思った。軍鶏屋を出ると、彼の足は外神田へむかった。

めずらしく霧の深い夜で、林之助は暗い海の底を泳いでゆくように感じた。

十三夜も過ぎた。十五日は神田祭りで賑わった。

林之助はお里と一緒に祭りを見物した。彼の大小はお里の着物や帯と入れ替えにして、無事に質屋の庫から請け出されていた。お里の顔には母をうしなった悲しみの色がもうぬぐわれていた。林之助の胸には、お絹をうしなった愁いの雲が吹きやられていた。二人に取っては楽しい祭りの夜であった。

祭りに騒ぎ疲れた人たちは、さらに新しい騒ぎの種を発見して驚き騒いだ。

祭りのあくる朝、お里の家がいつまでも戸をあけないのを不思議に思って、近所の者が戸をこじあけて窺うと、お里の寝すがたは階下の六畳に見えなかった。彼女は二階に若い男と枕をならべたままで死んでいた。