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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《江戸情話集(かごつるべ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,779 字 · 407 頁
と、次郎左衛門は笑いながら坐った。
栄之丞も無理に笑顔を粧った。
「お独りですか」と、彼はまた訊いた。
「妹がおりましたが、一両日前にほかへやりました」と、栄之丞は火鉢に粉炭をつぎながら答えた。
「おかたづきになりましたか」
「いえ、奉公に出しまして……」と、栄之丞はきまりが悪そうにうつむいた。
思ったよりも侘びしげな暮らしの有様を見て、次郎左衛門は可哀そうになった。大兵庫屋の八橋の情夫はこんなにおちぶれているのかと思うと、彼は可哀そうを通り越して、栄之丞を軽蔑するような心持ちの方が強くなって来た。自分の従弟――八橋はそう言っている――が不自由な暮らしをしているという事は、かねて彼女からも聞かされていたが、まさかこれ程とは思っていなかった。
かすかな火種では容易に火が起らないらしく、栄之丞は破れた扇で頻りに炭を煽いでいた。
「こっちへ来たらば、一度はお訪ね申そうと思いながら、いつも御無沙汰をしていました。八橋に聞きましたら、この頃はちっとも廓の方へもお出でがないそうで……」
栄之丞は蒼白い顔を少し紅くした。次郎左衛門が今夜なにしに来たのか、彼は一種の不安に囚われて碌々に返事もできなかった。