輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
さばくのこと
沙漠の古都
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《沙漠の古都(さばくのこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 110,076 字 · 220 頁
「ははあそのように申しましたかな?」
レザールは黙って考え込んだ。わずかに開けられた窓の隙から春の迅風に巻きあげられた桜の花弁が渦を巻いて、洋机の上へ散り乱れていたが、ふたたび吹き込んだ風に飛ばされどこへともなく舞って行った。
隣室で時計が十一時を報じ、なま暖かい春陽の光が洪水のように室に充ち窓下の往来を楽隊が、笛や喇叭を吹きながら通って行くのも陽気であった。
夫人は深い吐息をして、
「そういう訳でございますので、燐光を放す怪獣が二度と窓の辺へ来ないように、致したいのでございますけれど、しかしこれを警視庁へ届け、警官の方に来て戴いて邸宅を守ってなどいただいては、事があんまり大仰になり、世間一般に知れましたら良人が意気地なしに見えますし……」
「いかにもさようでございますね――世間一般に知れますより、敵党の連中に知られることが閣下にとっては不得策の筈で」
レザールは片眼をつむりながら、少し皮肉に云ったものである。
「はいその通りでございます……良人が市長になるに付いては大分反対者がございまして、選挙も苦戦でございました……ですから良人が今になって心臓の悪い病人だなどと敵党の人達に知られましたら、乗ぜられないものでもなし、それに犬のようなそんな獣に脅かされたなどと思われましたら、市長の威厳に関しますので」