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かはくれいじょう
河伯令嬢
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《河伯令嬢(かはくれいじょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 33,763 字 · 68 頁
……
福浦のあたりは、浜ひろがりに、石山の下を綺麗な水が流れて、女まじりに里人が能登縮をさらしていて、その間々の竈からは、塩を焼く煙が靡く。小松原には、昼顔の花が一面に咲いて、渚の浪の千種の貝に飜るのが、彩色した胡蝶の群がる風情。何とも言えない、と書いている下から、背負い重りのする荷は一歩ずつ重量が掛る、草臥はする、汗にはなる。荷かつぎに続いて息せいた時分から、もう咽喉の渇きに堪えない。……どこか茶店をと思うのに、本街道は、元来、上の石山を切って通るので、浜際は、もの好が歩行くのだから、仕事をしている、布さらし、塩焼に、一杯無心する便宜はありません。いくら俳諧師だといって、昼顔の露は吸えず、切ない息を吐いて、ぐったりした坊さんが、辛うじて……赤住まで来ると、村は山際にあるのですが、藁葺の小家が一つ。伏屋貝かと浜道へこぼれていて、朽ちて崩れた外流に――見ると、杜若の真の瑠璃色が、濡色に咲いて二三輪。……
可心は、そこを書くための用意だかどうだか、それまでの記事のうちに、一ヶ処も杜若を記していません。
――その癖、ほんの片浦を見ました。私の目にも。――」