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はたのてい
波多野邸
豊島 与志雄
線上閱讀豊島 与志雄《波多野邸(はたのてい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,194 字 · 45 頁
「なあに、ちょっと、骨惜しみをしなかっただけですよ、間もなく戦争はすむと、分っていたし、ほかに思案もありませんしね。」
戦争がすむと、彼はそこに簡単な小屋を建てた。持ち金の殆んど全部を注ぎ込み、屋根瓦などは焼け跡から自分で拾い集めた。その六畳と四畳半と二畳の家に、妻と二人の子供とを引き取り、広い耕地を拵えた。そして午前中は耕作、午後から夜にかけては「五郎」へ出かけた。
この戸村のところへ行くのが、魚住千枝子には楽しみだった。一升ばかりの米がはいってる袋をぶらさげて行き、袋一杯にかさばった野菜を持って帰るのである。この往来ははじめ、お花さんやお菊さんがしていたが、いつしか千枝子が進んで引き受けてしまった。袋の手触り、米にせよ、野菜にせよ、そのなにか新鮮な手触りが、書物などとは別な快感を与えてくれた。
耕地はみごとだった。瓦礫の畦で幾つかに仕切られ、周囲にはやはり瓦礫の砦が築かれていて、全部で三百坪ほどもあった。その半分以上に、各種の野菜が植えられていた。蚕豆や莢豌豆にはかわいい花が咲いており、キャベツの大きな巻き葉が出来かかっており、時無し大根の白い根が見えており、胡瓜の髯が長く伸びており、其他さまざまな野菜類が、各自の色合と形とで日光に輝いていた。