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はたのてい

波多野邸

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《波多野邸(はたのてい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,194 字 · 45 頁

青空文庫

彼女はそれを感じてか、頬から血の気が引いて透明になった。がすぐに、その頬を赤らめて、彼女は洋介のところへ行った。

「あの……小母さまが、呼んでいらっしゃいます。」

洋介は碁盤から眼を挙げて、彼女を見つめた。なにかふしぎなものをでも見るようで、そして少し長すぎた。それから答えた。

「ええ、すぐ行きます。」

高石老人は、ウイスキーのグラスを取り上げて、千枝子に言った。

「今あんたを、研究所の事務員として披露してたところだ。」

千枝子はもう平然として静かな笑みを顔に浮かべた。

洋介は黙って出て行った。

房江は寝間着の上に丹前をひっかけて、寝床のそばに引きよせた机にもたれていた。洋介がはいってゆくと、そのはれぼったいような瞼を静かに持ち上げた。睫毛が白っぽい感じに見えた。

「いかがですか。」と洋介は言った。「横になっていらっしゃらなければいけませんよ。」

「いえ、もう殆んど宜しいんですけれど……。」

彼女は何か考えてるようだった。洋介は待った。

房江は遠慮ぶかそうに話した。――皆さんに食事を出すつもりでいるが、ごくつまらないものしか出来そうにない。急なことだし、いつも世話になってる野崎さんに頼むわけにもゆかない。