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なきむしこぞう

泣虫小僧

林 芙美子

線上閱讀林 芙美子《泣虫小僧(なきむしこぞう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 34,906 字 · 70 頁

青空文庫

扉が開くと、小使いのお爺さんが、

「先生、この組に田崎啓吉という子供さんはおりますかな?」

と尋ねた。

「田崎? ああ級長さんでしょう、いますよ」

鉛筆の音が止まった。啓吉はどきりとした。

「一寸お母さんが、急用があるそうでなア、周章てて来ていなさるで……」

「そう、じゃそっと行ってらっしゃい」

先生は立ち上った啓吉の肩を押して、扉の出口へ連れて行った。啓吉が出て行くと、先生はまた声を張り上げて、

「領地をゆずる日に、王は娘たちを面前に呼んで……」

と愉しそうに朗読するのであった。

二十二

学校へなんぞ来た事のない母親が、何の用事でわざわざ啓吉を尋ねて来たのか、啓吉は不安で仕方がなかった。

小使い部屋では貞子が、大火鉢にしゃがみ込んであたっていた。

「まア、お使いだてして、本当に済みません」

小使いに世辞をいうと、貞子はすぐ立ちあがって、

「啓ちゃん、一寸」

と、啓吉を、外へ連れ出した。校庭では二組ばかりの体操があった。ポプラの樹の下に来ると、貞子は白い封筒を出して、

「ねえ、お母さまね、暫くの間だけど、九州へ行って来なくちゃならなくなったの。おじさん、御商売が駄目になってしまってねえ、とても、大変なのよ。