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なきむしこぞう

泣虫小僧

林 芙美子

線上閱讀林 芙美子《泣虫小僧(なきむしこぞう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 34,906 字 · 70 頁

青空文庫

啓吉は裏口へ回って見た。雨戸が閉ざされている。節穴から覗いてみたが、中は真暗だった。啓吉は庭へ立ったまま途方に暮れてしまったが、自分の影が一寸法師のように垂直に落ちているそばに、何時かの植木鉢が目についた。コツンと足で蹴ると、ごろごろと植木鉢が転んで行って、その跡には雌の蟋蟀がしなびたようになって這っていた。小さい雄は、植木鉢の穴からでも逃げたのであろう。啓吉はしゃがんで、乾物のようになった雌を取り上げると、一本一本ぴくぴくしている脚をむしってみた。

「母アさアん!」

返事がなかった。

「母アさんてばア……」

四囲が森としているので、声は自分の体中へ降りかかって来た。

大きい声で、再び啓吉は、

「母アさん!」

と呼んでみたが、声が咽喉につかえて、熱いものが目のふちに溢れ出て来た。本当に皆で九州へ行ってしまったのに違いない。啓吉は、ランドセールにしまいこんだ白い手紙の事を想いだすと、いよいよ自分一人捨てられてしまったような悲しさになった。

小さな風が吹くたび、からからと木の葉が散って来て、誰もいないとなると、自分の家が大変小さく見える。

啓吉は腹が空いたので、ランドセールから弁当を出して沓ぬぎ石に腰を掛けて弁当を開いた。