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〔『しなしそうとにほん』しょはん〕まえがき

津田左右吉歴史論集

津田 左右吉

線上閱讀津田 左右吉《津田左右吉歴史論集(〔『しなしそうとにほん』しょはん〕まえがき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 79,004 字 · 156 頁

青空文庫

しかし、そんな詮索は批評家のすることである。作家はただ自己の求めて未だ得ざるところ、現わさんとして未だ現わし得ざるところを古芸術において暗示せられたまでである。言を換えていうと自分と古芸術とが偶々何処かにおいて一つの契合点を得たのである。あるいは古芸術において自分の反映を認めたのである。そうしてこの場合においても一度び製作に臨んではその古芸術は全然意識の外に消えてしまわねばならぬ。

製作の材料を撰ぶのも同様である。例えば画家が水彩画を作る。それはその画家のその時に現わそうとすることが油絵よりもパステルよりもその他のものよりも水彩を以て現わすことが最も適切だと感ずるからである。もし日本人の趣味には水彩画が調和するというようなことを智力の上で判断して、それだから水彩を取るのだというような考があったならば、それは画家として最も不忠実なものである。もしくは画家たる資格のないものである。水彩画家はそんな外部的事情のために水彩画を作るのではなかろう。水彩画の生命はもっと奥深いところにあるはずである。あるいはまた彫刻家が日本人の趣味には木彫が合うというようなことを決めて置いて、それがために大理石よりも木を撰ぶというようなことがあるならば、それもまた同様の誤謬である。