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〔『しなしそうとにほん』しょはん〕まえがき

津田左右吉歴史論集

津田 左右吉

線上閱讀津田 左右吉《津田左右吉歴史論集(〔『しなしそうとにほん』しょはん〕まえがき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 79,004 字 · 156 頁

青空文庫

の首長もしくは指導者というような地位にいたのではないか、と推測せられもする。農業そのことの本質に伴う風習として、耕地が何人かの私有であったことは、明かであろう。この日本民族は牧畜をした形跡はないが、漁猟は到るところで営まれ、海上の交通も沿海の住民によって盛に行われた。しかしこういうことを生業としたものも、日本民族であることに変りはなく、住地の状態によってそれに適応する生活をしていたところに、やはりこの島に移住して来てから長い歳月を経ていたことが示されている。用いていた器具が石器であったことは、勿論である。

日本民族の存在が世界的意義をもつようになったのは、今のキュウシュウ(九州)の西北部に当る地方のいくつかの小国家に属するものが、半島の西南に沿うて海路その西北部に進み、当時その地方にひろがって来ていたシナ人と接触したことによって、はじまったのである。彼らはここでシナ人から絹や青銅器などの工芸品や種々の知識やを得て来たので、それによってシナの文物を学ぶ機会が生じ、日本民族の生活に新しい生面が開け初めた。青銅器の製作と使用との始まったのは前一世紀の末のころであったらしく、その後もかなり長い間はいわゆる金石併用時代であったが、ともかくもシナの文物をうけ入れることになった地方の小国家の君主はそれによって、彼らの