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〔『しなしそうとにほん』しょはん〕まえがき
津田左右吉歴史論集
津田 左右吉
線上閱讀津田 左右吉《津田左右吉歴史論集(〔『しなしそうとにほん』しょはん〕まえがき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 79,004 字 · 156 頁
しかし頽廃的空気の裡に力のない生活を営んでいた平安朝の大宮人の趣味は濃艶ではあるが活気もなく底力もなく、徒らに塗抹せられた強烈の色彩から感覚的刺戟を受けるのを喜んでいたに過ぎなかったというのか。それならば目を転じて関東武士を見たまえ。うちものの響き、矢叫びの声の間に目さむるばかり鮮かな馬上の行装を。鎌倉には金碧燦爛たる永福寺の七堂伽藍があったではないか。東夷の基衡が建てた中尊寺の光堂は今も遺っている。殺伐な武人が調子の強い、はでやかな色彩を好んだのは当然である。足利武士にもてはやされた田楽や猿楽は鋭い鼓笛の音と華やかな衣装とで成り上り者の粗大な官能を刺戟したものであった(当時の猿楽は今の能のような落ちついた、また型にはまったものではなかった)。桃山式の豪放な装飾芸術はいうまでもなかろう。わる固まりに固まった徳川初期の日光建築は、せせこましく、気のつまるようなうちにも、コッテリした華やかさだけは失われずにある。光琳にあらわれた元禄時代。あるいは友禅の京都、懐月堂の江戸。いわゆる浮世絵の世界はいわずもがなである。淡泊とか清楚とかいう面影は、少くとも、これらのものには見られない。