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りゅうこうさっかのし
流行作家の死
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《流行作家の死(りゅうこうさっかのし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,876 字 · 28 頁
「そうも言っちゃ居られない」
勇は渋谷の往来へ、鉄砲玉のように飛出して了いました。
行く先は、言う迄もなく小栗桂三郎の死んだ家。まだ未亡人の浪子は入らず、江藤老人夫婦が留守をして居るだけですから、見せて貰うにも手数が掛りません。
「江藤さん、一寸離屋を見せて下さい、少し調べ度いことがあるんだが――」
「早坂さんでしたか、どうぞ」
何んの蟠りもありません。
庭から廻って、離屋の外側の厳重な扉の鍵穴へ、秀子の化粧卓から持って来た鍵を差し込むと、何んの苦もなくスルリと入って、廻せば扉は滑らかに開きます。
「あッ、早坂さん、何処からその鍵を手に入れました」
廊下伝いに離屋へ入った江藤老人が、バアと顔を出します。
「いや、何」
足の勇がどんなに蒼かったことでしょう。
その晩遅く。
いつものように、長椅子の上に並んで掛けた勇は、恐ろしい疑惑に囚えられ乍らも、切り出し兼ねてワクワクして居りました。
「どうなすったの? 悪い顔色よ」
秀子は若い蔓草のような腕を伸べて勇の首にからみ付こうとしました。
真珠色のスタンドから射す光は、この情景をすっかり劇的に照して居ります。
「秀子さん、もう僕は斯うしちゃ居られない、今晩こそ、何も彼も言って了いましょう」