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ふどうするちか

浮動する地価

黒島 伝治

線上閱讀黒島 伝治《浮動する地価(ふどうするちか)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 14,079 字 · 29 頁

青空文庫

「餓鬼らめが、くそッ! どこへうせやがったんだい! ド骨を叩き折って呉れるぞ!」番人は樫の棒で、青苔のついた石を叩いた。

口ギタなく罵る叫びは、向うの山壁にこだました。そして、同じ声が、遠くから、又、帰って来た。

「貧乏たれの餓鬼らめに限って、くそッ! どうもこうもならん! くそッ!」

番人は、トシエの親爺に日給十八銭で、松茸の時期だけ傭われていた。卯太郎という老人だ。彼自身も、自分の所有地は、S町の方に田が二段歩あるだけだった。ほかはすべてトシエの家の小作をしている。貧乏人にちがいなかった。そいつが、人を罵る時は、いつも、「貧乏たれ」という言葉を使った。

「貧乏たれに限って、ちき生! 手くせが悪れぇや、チェッ!」

卯太郎は唾を吐いた。礫を拾って、そこらの笹の繁みへ、ねらいもきめずに投げつけた。石はカチンと松の幹にぶつかって、反射してほかへはねとんだ。泥棒をする、そのことが、本当に、彼には、腹が立つものゝようだった。

番人が、番人小屋の方へ行ってしまうと、僕等は、どこからか、一人ずつヒョッコリと現われて来た。鹿太郎や、丑松や、虎吉が一緒になった。お互いに、顔を見合って、くッ/\と笑った。