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よくそうのはなよめ

浴槽の花嫁-世界怪奇実話1

牧 逸馬

線上閱讀牧 逸馬《浴槽の花嫁-世界怪奇実話1(よくそうのはなよめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 48,908 字 · 96 頁

青空文庫

この人妖「斬り裂くジャック」は前後をつうじて、たった一度一人の人間に顔を見られて話をしている。

当時――いまでもあるが――バアナア街四四番地に、ささやかな果物屋があった。マシュウ・パッカアという男が細君相手に小さく経営している。狭い土間に果実が山のように積んであるので、店へ客がはいってくると邪魔になる。売る方も買うほうも身動きが取れなくなってしまう。そこで一策を案出して、表の戸を締めきり、それに小窓を開けて、ちょうど停車場か劇場の切符売場のような特別の設備をし、自分は内部におさまって、この窓からそとを覗いている。客には窓をつうじて応対し、品物も窓から出してやろうという一風変わった人物だ。

九月三十日、土曜日の午後十一時半ごろだった。

このパッカアが、もうそろそろ店を閉めようとして仕度しているところへ、窓のむこうに男女二人伴れの客が立った。男は、見たことがなかったが、女は、パッカアもよく知っていた。のっぽのリッツ――エリザベス・ストライド――で、この付近で名うての不良少女だった。

パッカアは妙にこのリッツの同伴者が気になったとみえて、それとも、人物それ自身が印象的な風貌を備えていたのか、じつに詳しくその人相服装を覚えて、後日逐一申し立てている。